工事請負契約を“たたき台作成→法定項目チェック→電子締結→保管”までAIで一直線に

背景・課題

現場は電子契約が広がっている一方、法務では契約書の作成とリーガルチェックが紙・Excel・メール添付に依存しがちで、条文の抜け漏れや版ずれ、担当者不在時の停滞が発生している。安全書類など関連文書も分散保管となり、アクセス権や改ざん防止、証跡管理を統一できず、監査・コンプライアンス対応に余分な工数がかかる。結果として、IT基盤がばらばらでセキュリティポリシーを徹底できず、契約リードタイムも長期化している。

AI活用ソリューション

解決策は、工事請負契約に特化した「AIドラフト＋法定項目チェック」を中核に、電子契約と文書管理へ自動でつなぐ一気通貫フローを構築することだ。具体的には、案件条件（工事種別、金額、工期、下請区分など）を入力すると、生成AIが最新の法制度に沿った契約のたたき台を即時作成し、同時に建設業法第19条の1の必須記載16項目を満たしているかを一覧で確認する。担当者は赤入れだけに集中し、確定後はソフトウェアの“ロボット”が画面操作を代替して電子契約サービスへ自動登録し、相手先への送付・回収・締結完了までを監視する。締結後は版管理・アクセス権・改ざん防止が効く文書管理に自動保存し、台帳や監査ログも同時生成する。ここでいうAPIは“システム同士をつなぐ差し込み口”、RPAは“人のクリックや入力を代わりに実行する自動化ソフト”のこと。専門用語に頼らず言えば、AIが雛形作りと漏れチェックをこなし、機械がそのままハンコ押しと保管棚入れまで運んでくれるイメージである。こうして作成・チェック・締結・保管を一つの流れにまとめると、作業時間が短くなるだけでなく、アクセス制御や証跡が自動で残るため、セキュリティとコンプライアンスも同時に底上げできる。

AI導入前後の変化

成果・効果・ROI

人件費8,000円／時で換算すると約81.6万円／月のコスト削減、年間約979万円の効果。初期構築150万円、運用10万円／月なら、単年度費用は約270万円で、概算投資回収は約2か月、年間ROIは約260％となる。監査時の証憑提示は即時化し、条文抜け・版ずれのインシデントは大幅低減。分散保管や私的保管の解消により、情報漏えいリスクと属人化も抑制できる（数値はモデルであり実データに応じて精査が必要）。

実事例

建設IT NAVIは、生成AIで工事請負契約書の雛形を即時作成し、建設業法第19条の1の必須記載項目を自動チェックする流れを紹介し、電子契約と組み合わせることで作成・リーガルチェック・締結・保管までの一気通貫運用が可能になると解説している。さらに、安全書類のチェックリスト自動生成などバックオフィスでの具体例も示し、非専門家にも理解しやすくまとめている。

https://process.uchida-it.co.jp/itnavi/info/c20250924/

さらなる展開

同じ仕組みをNDA、基本契約、下請注文書、JV協定書、安全衛生計画書まで広げれば、契約・規程・安全文書の作成から締結・保管・台帳管理が標準化される。設計・積算・購買と台帳をAPIで連携すれば、案件番号で関連文書を自動ひも付けでき、工事完了後の引き渡し書類一式の自動パッケージ化も可能になる。将来的には、改正動向の自動サマリ通知や、契約条項の交渉方針を提示する支援AIと連携し、専門家は最終判断と例外対応に専念できる。

導入ロードマップ

1. 現状分析 - 対象となる契約類型と件数、現行の作成～締結～保管フロー、使用テンプレート、分散保管の実態、監査要件とセキュリティ基準を洗い出し、標準フローと例外規程を定義する。
2. 費用対効果の試算 - 月次件数・工数・人件費単価から削減効果をモデル化し、初期費用・運用費・想定リスクコストを含めたTCOと回収期間を算出する。監査・内部統制の定量効果（証跡自動化、誤記削減）も補正する。
3. PoC検証 - 限定した契約類型で、AI雛形生成と法定項目チェックの精度、電子契約・文書管理とのAPI／RPA連携、アクセス権と監査ログの要件適合を小規模で実地検証し、プロンプトとテンプレートを調整する。
4. 社内稟議 - 稟議資料に効果試算、PoC結果、セキュリティ設計（暗号化・権限・監査ログ・データ保管域）と運用体制（最終承認者の責任分界）を明記し、法務・情報システム・監査部門の合意を得る。
5. 本番導入 - テンプレートとプロンプトを固定化し、運用手順書と権限ロールを整備。電子契約・文書管理と本番接続し、監査ログの定期点検と改善会議を運用に組み込む。導入後は件数・工数・指摘件数のKPIで継続改善する。