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経費承認をAIで“事後検証”へ切り替え、管理承認工数を年間約5,300時間削減した事例

業界:金融・保険 部門:財務・経理 課題:コスト削減・業務効率化(経費精算の承認負荷/不正検知) ソリューション:業務自動化・RPA(外部データ連携+AIによる定型判定・事後検証ワークフロー)

背景・課題

従来、経費精算は管理職が事前承認・目視チェックを行っており、申請件数が多いほど承認工数とコストが膨らむ一方で、過剰な事前承認は業務停滞を招いていた。さらに二重精算や不備検出の難しさから経費統制が効きにくく、現場と管理部門双方の負荷が高い。

AI活用ソリューション

本事例で採られた唯一の解決策は、“事前承認を原則廃止し、AIを中心とした事後検証ワークフローへ切り替える”ことです。具体的には、経費申請システムと入退館データ、勤務シフトデータ、交通系データや経費の定型ルールをAPIで連携し、AI(ルールエンジン+機械学習による異常検知モデル)が各申請を自動判定します。AIは(1)申請の正当性スコアを算出、(2)過去の類似申請や入退館・シフトと照合して矛盾を検出、(3)二重申請や高リスク項目を自動フラグ化します。フラグ付けされた案件のみを経理担当や管理職が監査・差戻しする運用とし、低リスク案件は自動処理・自動仕訳へ回すことで承認フローそのものを軽量化します。ポイントは金融・保険業界特有の勤務形態(支店外出張や営業拠点の入退館情報など)を取り込み、業界固有の“勤務実態と経費の整合性”を判定軸にする点です。これにより、単なるOCRやテンプレ判定では検知しにくい不正や不整合をAIが検出しつつ、日常的な承認業務を自動化します。

AI導入前後の変化

導入前 (Before)

  • 全ての経費申請が原則事前承認または管理職の目視確認を経て処理されていたため、管理職と経理の作業負荷が高く、承認遅延が発生。年間の承認工数は高水準で推移していた。
  • 導入により管理職・経理の承認関連工数を年間約5,300時間削減(導入事例に基づく実績値)。

導入後 (After)

  • AIによる自動判定で低リスク案件は自動処理され、疑義のある案件のみがワークフローで止まるようになった。これにより管理職の承認作業は大幅に削減され、承認遅延や事務対応時間も低減。

イメージ図

AI活用イメージ図

成果・効果・ROI

成果は以下の通りです。・年間承認工数削減:約5,300時間。・経費不備・二重計上の早期検出率向上により不正コスト抑制。・承認リードタイム短縮による業務スピード向上。ROI試算の例(仮定):5,300時間×4,000円/時間=約2,120万円の人件費削減効果。システム運用費や初期投資を仮に年間300万〜800万円と見積もると、初年度〜翌年度内に導入コスト回収が期待できる(前提条件により変動)。

実事例

明治安田生命は、AIによる経費の自動判定と複数データ連携を用いて事前承認を原則廃止し、事後検証へ切り替えた事例です。AIは入退館情報やシフトなどと照合して経費の適正性を判定し、不備や二重精算を検出することで管理職の承認工数を年間約5,300時間削減しながら経費統制を強化しました。

https://ai-keiei.shift-ai.co.jp/ai-accounting-example/

さらなる展開

この仕組みを社内で横展開すると、出張交通費以外の購買申請(少額の備品購入)、購買発注の二重発注チェック、請求書処理(AI-OCRと自動仕訳の組合せ)などにも適用可能です。さらにERPや経費精算システムとの双方向API連携で自動仕訳・支払スケジュール連携まで拡張すれば、支払サイクル短縮や資金繰り最適化にも貢献します。また、検出ロジックを保険金請求や取引先請求の不正検知へ転用することで、財務的リスク管理の強化も見込めます。

導入ロードマップ

  1. 現状分析 (0.5〜1ヶ月) - 経費申請のワークフロー把握、申請件数・承認手順・例外処理の洗い出し。入退館・シフト・勤怠・交通データなど連携可能な社内外データソースの特定とアクセス可否確認。年間工数・コストのベースライン算出。
  2. 費用対効果の試算 (0.5ヶ月) - 自動化対象の割合(例:申請件数の80%を低リスクで自動処理可能と想定)に基づき、期待される工数削減量と金額換算を試算。導入コスト(SaaSライセンス、接続開発、人材教育)と運用コストを比較し、単年度・複数年ROIを提示。
  3. PoC検証 (1〜3ヶ月) - 代表的な支店や部署での限定運用。既存申請データを用いてAIモデルの閾値調整を行い、誤検出率・見落とし率を評価。API連携の安定性、ワークフローのUI/通知フローを実業務で検証。
  4. 社内稟議・セキュリティ審査 (1ヶ月並行) - 経営層・リスク管理部門・情報セキュリティ部門への説明資料作成。個人情報・アクセスログの取り扱い、監査証跡の要件を満たす設計を確定し、稟議取得。
  5. 本番導入 (2〜4ヶ月) - 全社展開の段階的ロールアウト(支店単位や部署単位)。運用ルール(例:AIスコアの閾値、エスカレーションルール、検出アラートの対応基準)を周知し、監視体制を整備。運用初期はレビュー頻度を高く設定して学習データを蓄積し、継続的にAI判定精度を改善。

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