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受付・事務の“紙→電子”を自動化して現場負荷をゼロに近づける:医療現場向けAI-OCRによる帳票電子化ソリューション

業界:医療・福祉 部門:情報システム・IT 課題:人手不足・属人化解消・省力化 ソリューション:デジタル化(紙・PDF帳票の読み取り・電子化/AI-OCR+業務ルール連携)

背景・課題

医療機関では受付・会計・保険請求において紙の問診票、診断書、処方箋、保険請求書などの紙/PDF帳票が多数残存しており、手入力による業務負荷が高い。人手不足・職員の属人化により入力ミスや処理遅延、請求ロスが発生しやすく、業務の標準化と省力化が喫緊の課題となっている。

AI活用ソリューション

医療特化AI-OCRを核に、帳票テンプレート学習+医療項目正規化ルールを組み合わせ、電子カルテ(EHR/EMR)・会計・保険請求システムへ自動連携するワンソリューション。具体的には: - 帳票取得:受付スキャナ/スマホ撮影/PDF取込で帳票を取り込み。 - 医療特化OCR:保険者番号、被保険者番号、患者氏名、診療日、診療科、診断名(ICD補助候補)、処方薬名、金額など医療固有項目を優先学習して抽出。 - 帳票構造学習:レイアウトが異なる診断書や紹介状でもフィールド位置を自動認識するテンプレートレス学習を採用。 - 正規化・突合ルール:患者ID突合(生年月日+氏名の距離照合)、保険種別判定、診療コード候補マッピングを実装し、その結果をEHRへ自動投入。保険請求では請求コードの候補提示と、ルール違反(重複請求、必須情報欠落)の自動フラグを作成。 - 人のチェックと学習ループ:抽出信頼度が低いレコードだけを受付事務または医事担当が承認するワークフローを用意し、承認結果をフィードバックしてOCRモデルを継続学習(Human-in-the-loop)。 - セキュリティ:医療情報(PHI)保護のためVPC内またはオンプレミスで動作させ、ログ・アクセス制御・暗号化を徹底。 このソリューションは“医療項目の精度重視”と“既存EHRとの自動連携”に特化しており、現場が最小限のチェックで済むように設計されている。

AI導入前後の変化

導入前 (Before)

  • 紙問診票や紹介状、保険請求書は受付・医事課のスタッフが1件あたり平均7〜12分かけて手入力・目視確認していた。月間処理件数が数千件の場合、入力業務で複数FTE(常勤換算)が拘束される。入力ミスやフォーマット不一致のために請求差戻しや再確認が発生し、請求確定までに数日〜2週間を要するケースがあった。
  • 例:月間5,000件の帳票処理(受付・請求)で、導入前総工数=9,000時間/月(1件当たり平均10.8分仮定)、導入後=3,000〜4,000時間/月(自動処理率70%想定)。月間5〜7人分の工数削減、年間で60〜84人月の削減効果を見込める。

導入後 (After)

  • AI-OCR導入により、標準的な帳票は自動抽出でそのままEHR/会計へ連携され、要チェックの低信頼レコードのみヒューマンレビューが発生する運用に移行。通常帳票の処理時間は1件あたり平均1〜2分まで短縮し、処理待ち時間は数日→数時間に改善。事務処理にかかるFTE相当工数は30〜70%削減される想定(PoC結果により変動)。

イメージ図

AI活用イメージ図

成果・効果・ROI

効果・ROI: - 事務工数削減:30〜70%(運用設計と帳票の多様性に依存)。 - エラー低減:手入力ミス率を約80%以上削減(特に数値・保険番号等の定型項目)。 - 請求早期化:請求確定までのリードタイムを平均で2〜10営業日短縮し、キャッシュフロー改善に寄与。 - 投資回収期間(ROI):中規模病院での導入投資は、システム構築+連携+教育で初年度コストがかかるが、削減される人件費と請求未回収削減を合わせると6〜18ヶ月で回収できるケースが多い(PoCによる精緻試算推奨)。

実事例

医療機関での典型的な導入事例では、紙の問診票や紹介状をスキャン→AI-OCRで患者ID・診療日・診断名・薬剤名・金額を抽出→疑義レコードだけを人が承認→EHRと会計システムへ自動連携、という流れで受付・医事課の手入力工数を大幅に削減している。これにより請求差戻しや再確認が減り、処理速度と正確性が向上した。

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/genai-case-study-cotegg/

さらなる展開

横展開・拡張可能性: - 保険請求以外の帳票(リハビリ実績票、介護請求書、訪問看護記録)にもテンプレートレス学習を拡張して各部門に展開可能。 - 自然言語処理(NLP)を組み合わせ、自由記述の診療メモから要約や診療行為候補を抽出して医師のレポート作成負荷を軽減。 - 画像診断レポートや医療画像メタデータの自動タグ付けと連携し、研究用データセット作成を効率化。 - 電子署名やブロックチェーンで帳票の改ざん防止を強化し、監査対応を自動化。 - 多施設展開時は中央モデル+各院の微調整(Federated Learningや差分学習)で学習を共有しつつ院内個別ルールを維持する運用が可能。

導入ロードマップ

  1. 現状分析 - 処理中の帳票種類の洗い出し(件数分布、フォーマット多様性)、1件あたりの平均処理時間、人為ミス発生箇所、既存システム(EHR/会計/受発注)との連携仕様を調査。安全要件(PHI取り扱い、保存場所、アクセス制御)を整理。
  2. 費用対効果の試算 - PoC想定スコープに基づく初期投資(ソフトウェア、インテグレーション、ハード)、運用コスト(保守、クラウド利用料)、期待される工数削減効果、請求早期化によるキャッシュ改善を金額化。回収期間シナリオ(悲観/標準/楽観)を作成。
  3. PoC検証 - 代表的な帳票サンプル(紙・PDF)を用いてAI-OCRの抽出精度(必要項目のF1スコア)を評価。EHRとの連携テスト、ヒューマンレビュー画面のUX確認、セキュリティテストを実施。自動化率と誤検出率の閾値を決定し、承認ワークフローを設計。
  4. 社内稟議・体制構築 - PoC結果に基づき導入計画を作成し、予算・稟議を取得。運用ルール(チェック基準、役割分担、エスカレーション)を定め、事務・医事・システム部門の担当者を決定。教育計画と導入後のKPIを設定。
  5. 本番導入 - スケジュールを分割し段階導入(受付→請求→特殊帳票)を実施。データ移行、ログ監査、モデル継続学習プロセスを稼働させ、運用KPI(自動化率、誤検出率、請求確定までの時間、工数削減)をモニタリング。定期的にモデル精度とワークフローを改善。

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