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配送ルート最適化AIで、CO2と物流コストを同時に下げる標準運用を全社展開

業界:商社・小売・卸売 部門:環境・安全・CSR 課題:プロセス標準化・ガバナンス強化 ソリューション:最適化(スケジュール・人員配置・配送ルート・生産計画)

背景・課題

店舗数の拡大と温度帯の違い(常温・チルド・冷凍)により、地域ごとに配送設計の基準や意思決定がばらつき、走行距離の増加・車両稼働の偏り・CO2排出量の可視化不足が発生。環境目標(中期のCO2削減)に対して、属人的なルート設計では改善の検証・横展開が困難で、全社で共通のKPIとルールにもとづくガバナンスが必要だった。

AI活用ソリューション

解決策は“配送ルート最適化AIの標準運用化”に絞る。全店舗の位置、納品頻度・時間帯、温度帯ごとの積載条件、センター稼働時間、車両サイズ・台数、道路規制・実走行速度、CO2排出係数などを一元化して入力し、AIが「総走行距離・車両台数・遅延リスク・CO2」のバランスを最小化する配送コース案を自動生成。AIは新旧コースを比較し、距離・便数・CO2の変化を可視化して根拠ある差し替え判断を支援する。現場の運用は、(1)週次で新規出店・販促等の需要変動を反映して再最適化、(2)採用したコースを標準フォーマット(コースID、立寄順、時間窓、積載率、温度帯タグ)で確定、(3)変更理由と効果をダッシュボードに自動記録し、本部のCSR・物流・調達が同じ指標で承認・監査できるようにする。これにより、各エリアでバラバラだった設計・検証・承認フローを一本化し、環境KPIと物流KPIを同時に満たす全社ガバナンスを実現する。

AI導入前後の変化

導入前 (Before)

  • 地域ごとに異なる設計基準と経験則でルートを作成。距離・便数・車両構成の評価軸が統一されず、CO2削減の進捗管理や他地域展開の再現性が低い。
  • 各センターのルート再設計工数を概ね50〜70%削減(例:担当者2日→0.5〜1日相当)。週次の再最適化を無理なく運用可能に。

導入後 (After)

  • AIが全国一律のルールでコースを提案・比較し、効果を数値で提示。承認・記録・監査まで同じ指標で回るため、改善が継続しやすく、環境目標に直結する意思決定が可能に。

イメージ図

AI活用イメージ図

成果・効果・ROI

配送コースと車両台数を約10%削減、年間走行距離を大幅短縮し、物流由来のCO2排出を着実に削減(2017年度比で二桁%減を達成)。燃料費・車両費・委託費の合算で一桁%台後半のコスト削減を見込み、初年度〜12カ月程度で投資回収の目安。

実事例

ファミリーマートはAIによる配送ルート最適化を常温・チルド・冷凍の全温度帯に段階展開し、週次で需要変動を反映して再最適化。コースと車両台数の削減、走行距離短縮により物流由来のCO2排出を大幅に抑制。効果は標準化された指標で可視化・承認され、全社ガバナンスのもとで継続改善が回る仕組みを確立した。

https://www.family.co.jp/company/news_releases/2025/20250605_01.html

さらなる展開

・店舗の発注・在庫と連動した“需要予測×ルート最適化”によるさらに無駄のない便設計/・渋滞・気象データを取り込んだ当日動的リルーティング/・共同配送(他社飲料・菓子など)やリバースロジ(回収便)との一体最適/・CO2実績の自動集計とESGレポーティング連携/・人員シフト最適化との統合で“車両×人”の同時最適化へ拡張。

導入ロードマップ

  1. 現状分析 - 拠点・店舗・温度帯別の納品条件、車両スペック、現在のコース、KPI(距離・便数・CO2)を棚卸し。データ品質(欠損・重複・座標誤差)を点検。
  2. 費用対効果の試算 - 代表エリアでベースライン(現状)を測定し、AI最適化案との差分から距離・便数・CO2・工数の改善幅を概算。初期費・運用費との回収期間を算出。
  3. PoC検証 - 1〜2センターで4〜8週間運用。週次再最適化、現場フィードバック、配送品質(遅延・積載率)を評価し、標準ルールとダッシュボードを固める。
  4. 社内稟議 - CSR・物流・店舗運営・情報システムの合意形成。KPI定義(距離、便数、CO2、積載率、準拠率)と承認フロー・監査手順を文書化。
  5. 本番導入 - 全センターへ段階展開。標準フォーマットでコース登録・変更履歴を管理し、週次の自動最適化と効果測定を定着化。改善課題は四半期ごとに見直す。

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