モバイル網で動画トラフィックが急増し、従来のQoS(通信速度や遅延など)だけではユーザーが感じる“満足度”を把握できず、品質低下が起きてから苦情で気づく、原因切り分けに時間がかかるといった課題があった。アプリ側の情報取得が不要でないと導入が難しい、従来の標準(ITU-T P.1203)は10秒程度の粒度でしか推定できず、瞬間的な劣化の検知が遅れる問題もあった。
唯一の解決策は、端末→クラウドへの暗号化アップリンクのパケット統計だけから、動画視聴の体感品質(QoE=MOSスコア)を1秒ごとに推定・スコアリングする富士通のAI「Realtime Quality of Experience Sensing」をネットワーク側に実装すること。具体的には、基地局〜コア網のミラーポートで取得するアップリンクのパケット数や到着間隔などの統計を0.5秒スロットで特徴量化し、LSTMベースの映像特徴量推定モデル→MOS推定モデルの二段構成でサービスやプロトコル(HLS/DASH等)が変わっても適応可能にする。これにより、アプリ改修やメディア品質情報の取得なしに、利用者ごと・セルごとのMOSをリアルタイム採点し、しきい値割れ時に自動的に無線リソース再配分やハンドオーバー、スケジューリング強化をトリガーできる。結果として、映像停止や画質低下の前兆を秒単位で捕捉し、現場運用は“事後対応”から“事前回避”へと転換できる。
評価実験で、動画アプリから取得した情報を用いるITU-T P.1203の推定値と85%以上で同等のMOSを1秒粒度で推定。これにより、クレーム発生前の予防対応率向上、原因切り分け時間の短縮、過剰な設備増強の抑制が期待できる。ROI試算の考え方:①QoE劣化検知で返金・問い合わせ対応件数を何%削減できるか、②手動ログ解析時間の短縮時間×担当者コスト、③無線設備投資の先送り効果(CAPEX回避額)を積み上げる。
富士通は、暗号化アップリンクのパケット統計だけから、アプリ連携なしで動画視聴の体感品質(MOS)を1秒ごとに推定するAIを開発。LSTMを用いた二段モデルでビットレート・解像度・ストール等の特徴量を推定し、ITU‑T P.1203相当の推定と85%以上一致。全パケットを使う方法比で処理データ量98%削減し、運用指標としてMOSを活用して映像品質の維持・改善を可能にする。
https://www.fujitsu.com/jp/about/research/article/202310-realtime-qoe-sensing.html
同一基盤でクラウドゲームやライブ配信、AR/VRのQoEスコアリングへ拡張。RAN最適化(RIC連携)や5GスライスSLA監視、顧客サポート画面へのMOS可視化、品質起因の解約リスクスコア連携など、ネットワーク運用・CS・経営KPIに横展開可能。
「うちでもAIを導入したいけどどうすればいいの?」無料で相談を承ります。AI活用についてなんでもお気軽にお問い合わせください。